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転職の前に考えたい - 酸っぱい葡萄と甘い葡萄の話

イソップ物語の「酸っぱい葡萄」。木の上の葡萄を取れなかったキツネが、「どうせ酸っぱいに違いない」と強がって去っていく話です。これは「手に入らないものを否定して心を守る心理」を表しています。

 

逆に「甘い葡萄」という考え方もあります。今ある環境を「きっと甘いに違いない」と信じて工夫し、味わい尽くそうとする姿勢です。

 

 

病棟から訪問看護へ転職する人の本音


病棟から訪問看護へ転職する看護師は少なくありません。理由を聞くと「病院では自分らしい看護ができない」「患者さんとじっくり関われない」といった声が多く上がります。

 

しかし、実際には「訪問看護がしたい」と門を叩く人はほとんどいません。むしろ「病棟では酸っぱい」と感じ、「訪問ならきっと甘いはず」と移るケースが大半です。

 

 

本当に“甘い葡萄”は訪問にしかないのか?


私の経験から言えるのは、病棟でできなかったことが、訪問に行けばすべて叶うわけではない、ということです。

 

訪問には訪問ならではの制約や難しさがあります。病棟には病棟なりの役割やチームの力があります。

 

どの場所にも「制約」と「可能性」が共存しており、どこで働いても“看護の実現”は簡単には手に入りません。つまり「甘い葡萄」を見つけられるかどうかは、環境ではなく、自分の姿勢や工夫次第なのです。

 

 

転職の前に立ち止まって考えてほしい問い


転職を考えるときには、ぜひ次のことを問い直してみてください。

 

「いまの職場を酸っぱいと決めつけていないか?」「甘さを引き出す工夫を自分は試しきっただろうか?」「訪問に行っても同じ壁にぶつからないだろうか?」

 

転職そのものが悪いわけではありません。ただ、病棟を辞めても訪問看護を辞めても、同じ理由で迷う人は少なくありません。その背景には「葡萄を酸っぱいと決めつけて、味わい尽くす前に手放してしまった」という共通点があります。

 

 

実際の工夫例 <病棟での工夫例>


・関わる時間を短くても濃くする

5分しかなくても「患者さんの表情を一度はしっかり見る」「名前を呼びかける」といった“質”を意識する。

 

・チームの中で自分の役割を明確にする

すべてを理想通りにするのは難しい。だからこそ「自分ができる看護」を小さく定義してみる。

 

・改善提案を一歩出してみる

カンファレンスや記録の工夫など、小さな提案が職場の雰囲気を変えるきっかけになる。

 

 

実際の工夫例 <訪問看護での工夫例>


・孤独を防ぐ仕組みを持つ

一人で判断しないために、電話やLINEでチームとすぐ共有できる環境を整える。

 

・時間管理の工夫

ケアの最中に必要以上に長く滞在しすぎないよう、訪問前後で「今日のゴール」を明確にしておく。

 

・家族との信頼関係づくり

患者さん本人だけでなく家族との会話を重ねることで、看護の広がりとやりがいを感じやすくなる。

 

 

終わりに


病棟の看護も、訪問の看護も、それぞれに苦しさと喜びがあります。大切なのは「どこなら甘いか」を探すことではなく、「どの場でもどう甘さを見出すか」を考えることです。

 

転職の扉を開く前に、一度立ち止まり、自分がいまの職場の葡萄を酸っぱいと決めつけていないか、振り返ってみてください。その視点と工夫があれば、転職も今の仕事も、より意味ある選択になるはずです。

 

 

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