はじめまして。
東京都東村山市で訪問看護師をしています。
このホームページでは、訪問看護を続ける中で考えたことや、利用者さん・ご家族との関わりから学ばせていただいたことを書いています。
病気や障害だけではなく、その人らしい暮らしや人生に目を向けること。
正解を示すのではなく、その人なりの方向を探すこと。
そんなことを大切にしながら、少しずつ記事を書き続けています。
高校生の頃、虫垂炎で入院したことがあります。
手術前の病室で、私はとても緊張していました。
少しでも気持ちを落ち着かせようと、自宅でよく聴いていたゆったりとしたピアノ曲を流していました。
そんな時、病室に入ってきた看護師さんが、
「あら、良い曲ね」
と声をかけてくれました。
今思えば、看護師さんにとっては何気ない一言だったのだと思います。
けれど、その一言で不思議と気持ちが楽になりました。
緊張している自分を変えようとしたのではなく、そのまま受け入れてもらえたような気がしたからです。
二十年以上経った今でも、その時のことをはっきり覚えています。
看護師になった後は病棟で働いていました。
けれど、私は病棟看護師として決して優秀なタイプではありませんでした。
物事を一つずつ進めることは好きでしたが、多重業務や優先順位をつけながら働くことが苦手でした。
患者さんの話を聞いているうちに時間が足りなくなる。
急いでいるつもりでも周囲より遅い。
看護は好きなのに、看護業務がうまくできない。
そんな思いを積み重ねるうちに、自分のできないことばかりを見るようになりました。
そして心を崩してしまいました。
当時は、自分は看護師に向いていないのかもしれないと思っていました。
そんな時に、訪問看護ステーションの立ち上げメンバーにならないかと声をかけていただきました。
病棟とは違う働き方をしてみたい。
そんな気持ちから訪問看護へ転職しました。
けれど、訪問看護に転職したからといって、すぐに楽しく働けるようになったわけではありません。
一年目は、とにかくできないことだらけでした。
正直なところ、
「あれほどできなくて逃げ出した病棟看護師に戻った方がマシだ」
と思う日もありました。
訪問看護を辞めたい。
そんなことばかり考えていた時期もあります。
ただ、私は立ち上げメンバーでした。
簡単に辞めることはできませんでした。
今振り返ると、この「辞められない環境」が大きかったように思います。
辞めることができないのであれば、辞める理由ではなく、続ける理由を探すしかありませんでした。
利用者さんの良いところ。
うまくいったこと。
自分にできたこと。
小さな変化。
小さな成長。
そうしたものを探すようになりました。
訪問看護を始めた頃の私は、利用者さんのできないこと探しをしていました。
そして同時に、自分自身のできないこと探しもしていました。
そんな私に、
「できなくても良いんだ」
ということを教えてくださったのも利用者さんでした。
振り返ると、利用者さんのできることを見ることと、自分のできることを見ることは同じことだったのかもしれません。
今でも、できないこと探しをして苦しんでいる看護師さんは少なくないと思っています。
もちろん、私が答えを持っているわけではありません。
けれど、自分自身がそうだったように、
「できないこと」だけではなく、
「できていること」や
「まだ気付いていない可能性」
を見るきっかけは作れるかもしれない。
そんなことを考えるようになりました。
訪問看護への転職を勧めたいわけでもありません。
病棟には病棟の良さがあります。
訪問看護には訪問看護の良さがあります。
ただ、訪問看護という選択肢があること。
続けることで見えてくる可能性があること。
そんなことを伝えられたらと思っています。
訪問看護を続ける中で、利用者さんやご家族から本当に多くのことを学ばせていただきました。
人生との向き合い方。
老いるということ。
病気や障害と共に生きるということ。
大切な人との別れ。
そして、できないことがあっても、自分なりに向き合いながら生きていくということ。
利用者さんは教えようとしているわけではないと思います。
けれど私は、人生をかけて積み重ねてきたものを、日々の関わりの中で教えていただいているように感じています。
私が学ばせていただいたことを、少しでも地域へお返ししたい。
利用者さんから受け取ったものを、次の誰かへ手渡したい。
そんな気持ちで、このホームページを書いています。
ひまわりは花が咲いた後、たくさんの種を残します。
その種は動物に運ばれたり、土へ還ったりしながら、また次の花へとつながっていきます。
このホームページも、そんなひまわりの種のような存在になれたら嬉しく思います。