障がい施設に入所されている利用者さん。
コーラが大好きで、毎朝、惣菜パンと一緒に飲むことが日課になっていました。
ですが、いつも先にコーラを飲んでしまい、お腹が膨れてパンが食べられなくなっていました。
施設では、
「先にパンを食べようね」
「パンを食べたらコーラを飲もうね」
と対応されていましたが、
利用者さんは、
「やだ、先にどうしてもコーラが飲みたい」
と強く訴えられていました。
今回は、その関わりの中で感じたことについて綴っています。
施設の対応は、決して間違っていたわけではありません。
栄養を考えれば、
先にパンを食べた方が良い。
とても自然な考え方です。
ですが、
“正しい説明”だけでは、利用者さんの気持ちは動きませんでした。
「先にパンを食べて」
と言われれば言われるほど、
「先にコーラが飲みたい」
という気持ちが強くなっているようにも見えました。
支援では、
“正しさ”が、そのまま相手に届くとは限らないことがあります。
ある日、私は利用者さんへ、
「今日は良いお話があります」
とお伝えしました。
すると、
「なに?」
と興味を持たれました。
そこで、
「先にパンを食べると、あとでコーラがもっと甘く感じるらしいですよ」
とお話ししました。
すると利用者さんは、
「じゃあ、先に食べてみる」
と惣菜パンを一口、口へ運ばれました。
結果として、
二口目までは続きませんでした。
ですが、
これまでとは少し違う空気を感じました。
“やらされる”ではなく、
“自分で試してみる”
へ変わった瞬間だったのかもしれません。
その時、私はイソップ物語の「太陽と風」を思い出しました。
強い風で無理にコートを脱がせようとすると、人はかえって身を固くします。
ですが、
太陽の暖かさによって、自らコートを脱ぎたくなる。
支援も、少し似ているのかもしれません。
「ダメ」
「こうした方が良い」
だけでは、気持ちが動かないことがあります。
その人が、
「やってみようかな」
と思える関わり方。
在宅療養や障がい支援では、その視点がとても大切なのだと感じています。
今回の関わりで、
コーラを飲まなくなったわけではありません。
惣菜パンを完食できたわけでもありません。
ですが、
“禁止する”
から、
“本人が試してみたくなる”
へ少し変化がありました。
支援では、
相手を変えようとするほど、苦しくなることがあります。
だからこそ、
「どうすれば一緒に考えられるか」
という視点を大切にしたいと思っています。
在宅療養や障がい支援では、“正しいこと”を伝えるだけでは届かない場面があります。
だからこそ、その人自身が「やってみようかな」と思える関わり方を、一緒に考えていきたいと思っています。