退院して間もない利用者さんのお宅へ訪問した時のお話です。
訪問すると、ご夫婦から開口一番、
「すいません、怪我をしてしまいました」
と声を掛けられました。
最初は、その言葉の意味がよく分かりませんでした。
けれど、その後のお話の中で、在宅療養ならではの考え方を改めて感じる出来事となりました。
その日、利用者さんの膝には軽い擦り傷がありました。
大きな怪我ではありませんでしたが、ご夫婦は申し訳なさそうにされていました。
私は最初、
「なぜ謝られるのだろう」
と思いました。
怪我をしたこと自体は残念なことですが、誰かに迷惑を掛けた訳ではありません。
けれど、ご夫婦にとっては、
「退院したばかりなのに怪我をしてしまった」
「支援してもらっているのに申し訳ない」
そんな気持ちがあったのかもしれません。
私はご夫婦へお伝えしました。
「在宅では、怪我がつきものです」
「ここは治療の場ではなく、生活の場ですから」
そして、
「同じような状況の利用者さんでも、同じ場面で怪我をされることがあります」
ともお話しました。
すると、ご夫婦は少し安心されたような表情をされました。
病院では、怪我や転倒が起きると、その理由や経緯を確認します。
在宅でも同じように確認はします。
ただ、目的が少し違うように感じています。
在宅では、
「誰が悪かったのか」
を探すためではありません。
「次はどうしたら良いだろう」
を一緒に考えるためです。
原因を知ることは大切です。
けれど、それは責任を追及するためではなく、次の暮らしに繋げるためのものだと思っています。
訪問看護では、利用者さんと一緒に生活を考えていきます。
怪我をしないことだけが目標ではありません。
その人らしく暮らし続けること。
その中で起きた出来事から学び、次へ活かしていくこと。
原因究明は、過去を振り返るためだけではなく、未来へ進むためのコンパスなのだと思います。
このご夫婦とも、そんな在宅療養の考え方を共有できた一日でした。
在宅療養は、病院とは違います。
生活の中では、思い通りにいかないこともあります。
時には怪我をすることもあります。
けれど、それも含めて生活です。
訪問看護は、失敗しないための支援だけではありません。
利用者さんやご家族と一緒に、暮らしを続けていくための方法を考えていく仕事なのだと思います。
■病院でできたことが、自宅では難しかった
病院で身につけた動作やリハビリ技術も、在宅ではそのまま通用しないことがあります。
利用者さん、ご家族と一緒に、“暮らしに合う形”を探していったお話です。
■便利になるほど、失っていたもの
介護ベッド導入後に気づいた、“便利さ”と“残存機能”についてのお話です。
■「今日は川を見に行く」
「今日は川を見に行く」——車椅子の利用者さんと向かった懐かしい景色。
リハビリの先にある、“その人の想い”について綴っています。